熊本大学GP「IT時代の教育イノベーター育成プログラム」 国際セミナー
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実施報告

行事名
 熊本大学 国際セミナー
「高等教育の世界的趨勢:グローバル化、競争、知識の視点から」
主催者
 熊本大学
日時
 平成21年10月13日 17時00分~19時00分
報告者
 熊本大学 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 大森不二雄
報告日
 平成21年11月12日

 実施したイベントの成果

 グローバル化を受けた知識社会の到来、及びそれに対応する高等教育の在り方の検討が、高等教育界のみならず社会全体の重要課題であることは、世界各国で政府主導の様々な大学改革が実施されてきていることからも明らかである。今回の国際セミナーは、高等教育政策の動向に関する国際比較研究において第一人者、オーストラリア・メルボルン大学高等教育研究センター教授のサイモン・マージンソン教授をお迎えし、高等教育とグローバル化の全体像についてご講演を頂いた。講演開催当時、広島大学・高等教育研究開発センターに外国人研究員として滞在されていたマージンソン教授は(本報告作成時には既にオーストラリアに帰国)、「高等教育の世界的趨勢:グローバル化、競争、知識の視点から “Globalization, Knowledge and Competition in Higher Education”」という演題で、日本やアジア諸国の状況を例に挙げつつ、高等教育がグローバル化にいかに対応して行くべきかについてお話をされた。
 マージンソン教授は、ご講演の導入部にてまず「グローバル」や「グローバル化」の定義について述べられ、続いて「高等教育において、グローバルなアクションとは何を意味するか?」という問いを提示された。マージンソン教授によると、グローバル化が進展した現代の高等教育は、これまでにも課せられていた「National(国レベル)」「Local(地域レベル)」のミッションを引き続き担い続けるとともに、「Global(世界レベル)」な動向にも対応しなければならないという。マージンソン教授はさらに、大学世界ランキングにおいて上位にランクされれば国内で知名度がアップする、国レベルの政策や条約が大学のグローバル展開に影響を及ぼす、といった例を挙げ、このNational, Local, Globalの三側面は、互いに関連し合っている、と指摘された。
 次に、マージンソン教授は、各国の高等教育機関をグローバルな視点で考える際に重要な指標となるのは、国の高等教育への投資額、研究論文の生産量、“HiCi研究者”(High Citation Researcher=研究論文において頻繁に引用される研究者)の人数、及び世界ランキングだと述べられた。そして、それぞれの指標における日本の高等教育の動向を数値で示しながら、グローバル化の中の高等教育にとってキーワードとなるのが「競争」と「協力」であることを強調された。具体的には、国境を超える共同研究に見られるような「協力」、並びに著名研究者の外国の高等教育機関による引き抜きや各国の留学生獲得といった「競争」はグローバル化時代の高等教育の特徴であり、高等教育機関は「協力」「競争」の両方をバランス良く展開していくことが求められているという。その他、グローバル化が象徴するものとしてマージンソン教授は、世界各国の留学生動向の変容について言及された。ここ10年間、グローバル化が進むのと並行して、教育のために国境を超える学生の数は増加の一途を辿っており、その数は経済不況期においてさえも増え続けているという。
 グローバル化が高等教育にもたらす影響について包括的にご説明をされた後で、次にマージンソン教授は、グローバル化に対応した高等教育戦略について示唆された。それらの戦略は、シンガポールの“グローバル・スクールハウス構想”に代表される政府主導型パターン、ノッティンガムのマレーシア分校のような個々の大学主導によるもの、そしてボローニャ宣言等の多国間の共同戦略と多様化している。最後にご講演のまとめとして、マージンソン教授は、「協力」「競争」の2つのキーワードの重要性、そしてワールドクラスであると同時に国・地域レベルの独自のミッションを追求していくことこそが、グローバル化時代の高等教育に課せられた課題だと強調され、ご講演を締めくくられた。講演後の質疑応答では、諸外国が行っている「教育ハブ構想」や「知識都市構想」といった高等教育戦略を日本でも成功させることは可能か、といった質問が参加者から出され、マージンソン教授と興味深い質疑が交わされた。

 今後の事業への反映

 本講演はビデオ撮影されており、本GP事業の「国際遠隔共同授業の開発」において、実際の授業コンテンツとして使用される。
[文責:教授システム学専攻 特定事業研究員 竹内愛]

 当日の様子

 
メルボルン大学 教授
サイモン・マージンソン氏

 
熊本大学 教授システム学専攻
大森不二雄

 
熊本大学 教授システム学専攻
渡邊あや
 
会場の様子

 参加人数

【参加者合計:36名】
  事前登録:26名
  当日参加:10名
(学内33名/学外3名)