熊本大学GP「IT時代の教育イノベーター育成プログラム」 国際セミナー
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実施報告

行事名
 熊本大学 国際セミナー
-英国リバプール大学の国際産学連携によるeラーニング政策-
主催者
 熊本大学
日時
 平成21年8月11日 15時00分~17時00分
報告者
 熊本大学 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 大森不二雄
報告日
 平成21年9月9日

 実施したイベントの成果

 大学等の高等教育機関が海外企業との研究や共同プロジェクトを行う「国際産学連携」は、大学及び企業双方のメリットとなり、ひいては国としての国際競争力の強化につながるとされることから、近年その重要性が指摘されている。今回の国際セミナーは、その国際産学連携をテーマに、リバプール大学前学長のジェームズ・ドラモンド・ボーン卿をお迎えし、東京田町のキャンパスイノベーションセンターにて開催された。ボーン教授はリバプール大学オンライン大学院を国際産学連携の成功例として挙げ、「英国リバプール大学の国際産学連携によるeラーニング政策-180か国から3,000人以上が学ぶオンライン大学院をいかに実現したか-」という演題で、国際戦略、経営戦略、IT戦略、等の観点からお話をされた。
  英国有数の研究大学であるリバプール大学は、米国の大手教育関連企業であるローリエイト・エデュケーション社(Laureate Education)との包括的連携により、1999年に100%オンラインの大学院を設立した。2003年に最初の修士号取得者2名を輩出したこのオンライン大学院は、短期間のうちにグローバルな発展を遂げ、現在では世界約180カ国から3,000人が学んでいる。ボーン教授は学長として在職されていた2002年から2008年までの間に、リバプール大学の国際化の推進に多大な貢献をされ、オンライン大学院のグローバルな展開においても立役者として中心的な役割を担われた。
  ボーン教授はご講演の最初に、「国際産学連携というが、なぜそもそも“国際”なのか」という初歩的な疑問を提示し、高等教育の国際化自体の目的について言及された。国際化をする目的は各大学によって少しずつ異なるという前提であるが、リバプール大学の場合それは、「学生と教員の為のより良い環境づくり」「収入増加」そして「大学としてのブランド力の向上」の3つであったという。それらの目的を達成するためには、教員の海外採用、国際的な研究協力、国境を超える教育提供によってもたらされる収入増、海外同窓生の口コミによる大学の知名度アップ、大学ランキング表の順位向上、等が必要とされ、国際産学連携によるオンライン大学院のグローバル展開はそのような分析の下で推進された。
  二つ目に、ボーン教授は産学連携における経営戦略に関して言及され、大学側と企業側のそれぞれの役割分担の重要性を説かれた。オンライン大学院設立にあたっては、リバプール大学側がアカデミックな教育の質を保持する責任を担う一方で、ローリエイト社は企業として持っているマーケティングリサーチ力を用いて、初期マーケティング分析を行った。その分析の結果、中間キャリア層に学生ターゲットを絞り、現行のBlackboardでの教育提供や、24時間体制のオンラインチューター制度を採択したという。
 更にこの産学連携独自の経営戦略は、リバプール大学が2006年に中国西安交通大学と提携し、中国・蘇州に西安交通リバプール大学(Xian Jiaotong-Liverpool University)を設立した際にも発揮されたという。中国教育省より認可された最初の英中合弁大学である西安交通リバプール大学は、リバプール大学の資本投資によって設立のイニチアティブが取られたが、その際にマーケティングのみならず資金面での提供を行ったのがローリエイト社であった。ボーン教授によると、ローリエイト社は大学の設置場所の選択にも徹底的なマーケティングリサーチを行い、その結果、2000以上の国際企業が集まり近年目覚ましい発展を遂げている、蘇州工業地区が選ばれたという。
  最後にボーン教授は、国際産学連携を成功させるために必要な条件として、「関係者全員のコミットメント」「経営管理能力」「財源確保」「関係者が目標や課題を理解していること」「異文化理解力」そして「忍耐」の6つを挙げられてご講演を締めくくられた。
 今回の国際セミナーは東京で開催されたということもあり、学内関係者のみならず学外からも多数の参加者に来場頂き、当該テーマへの興味の深さが伺われた。講演後の質疑応答でも、「オンライン大学では教育だけでなく研究の方にも力を入れているのか」「中国でのマーケティングはどのように行ったのか」等の興味深い質疑が交わされた。

 今後の事業への反映

 本講演は、ビデオ撮影されており、本GP事業の「国際遠隔共同授業の開発」において、実際の授業コンテンツとして使用される。また、「国際産学連携」という高等教育における比較的新しい課題に関してボーン教授がご教示くださった成功の為のノウハウは、本学における大学運営や国際化戦略にも参考にされるべきものである。
[文責:教授システム学専攻 特定事業研究員 竹内愛]

 当日の様子

 
リバプール大学 前学長
ジェームズ・ドラモンド・ボーン 卿

 
熊本大学 教授システム学専攻
大森不二雄

 
会場の様子
 
会場の様子

 参加人数

【合計43名】
・学内 18名 事前登録:18名
・学外 25名 事前登録:21名