熊本大学GP「IT時代の教育イノベーター育成プログラム」 国際セミナー
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実施報告

行事名
 熊本大学国際セミナー in 東京
主催者
 熊本大学
日時
 平成20年4月12日 10時00分~15時00分
報告者
 熊本大学 社会文化科学研究科 教授システム学専攻長 鈴木 克明
報告日
 平成20年4月25日

 実施したイベントの成果

 今日、インストラクショナル・デザインは、e-ラーニングの発展に欠くことのできないものとなっている。熊本大学「IT時代の教育イノベーター育成プログラム」では、国際・産学連携「e-ラーニング」でグローバル人材育成を主導できる「e-ラーニング専門家」の育成に取り組んでいる。今回はその一環として、インストラクショナル・デザインの父として知られる故ロバート・ガニェ教授と深い親交のあった、ウォルター・ウェイジャー教授(フロリダ州立大学名誉教授)に、「ロバート・ガニェが遺したもの(Legacy of Robert M. Gagne)」と題してご講演をいただいた。
 2002年、享年86歳で他界されたロバート・ガニェ教授は、教育心理学者でありながら、教育学の領域を闊歩された知の巨人である。ウェイジャー教授とガニェ教授は1972年に出会われ、フロリダ州立大学大学院教育学研究科において同僚として過ごされたばかりでなく、後年「インストラクショナル・デザインの原理」を共に執筆されている。今回の講演はインストラクショナル・デザインの父の素顔をご紹介いただく貴重な機会となった。
 講演の冒頭では、ガニェ教授の講義風景が放映され、参加者全員が肉声に聞き入った。また、講演の随所で、ある事象、たとえば構成主義について、ガニェ教授であればどのように考えるかということ、またその理由についても詳しくご紹介いただき、参加者は「インストラクショナル・デザインの偉大な父」の視点を垣間見ることができた。
 ウェイジャー教授によると、ガニェ教授が遺されたものには大きく次の3つがあるということである。
 1つ目は、「学習成果の五分類」である。教育目標の分類で有名なベンジャミン・ブルームは学習される能力について認知領域・情意領域・運動技能領域の3領域を定義したが、ガニェ教授は新たに言語情報(verbal information)と認知的方略(cognitive strategies)の2領域を定義し、学習成果に必要な条件(言語情報、知的技能、態度、認知的方略、運動技能)の五分類を示したこと。
 2つ目は、9つの教授事象(注意を獲得する、学習目標を提示する、前提条件を思い出させる、新しい情報(コンテンツ)を提示する、学習の指針を与える、練習の機会をつくる、フィードバックを与える、パフォーマンスを評価する、保持と転移を高める)を定義したこと。これらは、今日では基本的なことと捉えられるようになっているものばかりであり、教育ないし研修に携わる人々が立ち止って振り返る原理的な要素から構成されている。
 そして3つ目の重要な遺産は、上述の2つを合わせて教授理論(instructional theory)として体系化したことに加えて、日々、教えることと学ぶことの研究に対する情熱を背中で示し続けたことである。
 講演後の新入生を含む参加者を交えた質疑では、そもそもインストラクショナル・デザインはなぜアメリカでかくも発展を遂げたのかということや、在校生や新入生からガニェ教授の書籍などを通して学んだ知識を活かした質問、日頃から興味を抱いていた同氏の素顔に関わるところ、やる気を持続させる方法についてなど、シンプルかつ実践的な質疑が交わされた。また、インストラクショナル・デザインが世界中どこにでも通用するユニヴァーサルなものか、という質問もあった。

 今後の事業への反映

 本事業全体の中核的要素であるインストラクショナル・デザインの原点を再確認し、新たな発展のための強固な基礎の構築へと向けた動きに繋がるものであった。
[文責:教授システム学専攻 特定事業研究員 牧貴愛]

 当日の様子


フロリダ州立大学 名誉教授
ウォルト・ウェイジャー 氏

 

 
 

 参加人数

【合計98名】
・学内 79名 ・学外 19名